

インターネットの発達やスマートフォンの普及によって、昨今ではオンライン上で商品を購入する事は一般化してきました。更にその傾向を加速させたのが新型コロナウイルスです。今ではオンライン上で商品を購入する事ができるEC系のアプリがBtoCからCtoCまで多くリリースされ、日常の一部になるほど広く利用されるようになりました。出店者を募り、多数の商品を扱うモール系のサービスに加え、お客様と直接接点を持つために、自社独自でオンラインショップ機能を備えた店舗アプリを活用する事業者さまが増加傾向にあります。
そこで今回は、店舗アプリの収益構造と、店舗アプリを運用する主な目的の一つであるEC事業の主要なKPIをご紹介します。そして最後に、店舗アプリの効果的なデータ活用について、ユーザー利用データの分析手法を実際の事例を用いて解説します。
データの分析後のマーケティング施策についてもこちらの記事にて解説しています。
【事例あり】店舗アプリの売上に繋がるマーケティング施策を解説!
小売(店舗)事業とアプリの相性
新型コロナウイルスの感染拡大により数々の生活様式の変化が余儀なくされてきました。その影響で小売業界においては、これまではお客様が店舗に足を運び商品を購入する事が一般的でしたが、店舗に来店せずにオンラインショップで商品を購入するという流れがより一層加速しました。その影響で、今までよりも多くのお客さんに認知、(オンライン上での)来店をしてもらえたというポジティブな面も多くあると思います。
そこで一度接点を持ったお客様に、より店舗や自社のブランドのファンになってもらうためには、購買機会のオンライン化だけでなくお客様とのコミュニケーションもオンライン化していく事が必要です。
オンライン上でのコミュニケーションのチャネルはいくつも存在していますが、アプリというプラットフォームは以下の理由からファン化させる為には相性が良いと考える事ができます。
それでは上記の点を押さえて、早速、収益構造から見るべきKPI、データ活用事例について紹介します。
店舗アプリの収益構造
- アプリ外での収益(店舗誘導により生まれる収益)
- アプリ内での収益(EC事業による収益)
- 流入数 × 起動率 = AU(アクティブユーザー)
- 購入率 = CVR:CVR = コンバージョン(購買)数 ÷ 起動数 × 100
- 購入単価 = ARPPU
本記事では、店舗アプリにおけるアプリ内での収益 = EC事業(アプリ)のKPIを紹介します。
店舗アプリの主なKPIを紹介
上記で示した収益構造をもとに、売上向上の3つの要素をさらに分解していきます。
①ユーザー数を増やす(AU)
AU(アクティブユーザー)は以下の3つに一般的に分けられます。
新規ユーザー
【定義】
アプリをインストールした当日のユーザーのこと
【改善の方向性】
アプリの認知度を向上させ、インストール数を最大化させる
【施策例】
・自然流入の最大化(店舗でのPRなど)
・従業員紹介でのダウンロード促進
・話題化(SNSの活用、紹介キャンペーンなど)
・オンライン広告への出稿
既存ユーザー
【定義】
アプリをインストールして一定期間が経過しているユーザーのこと
【改善の方向性】
アプリ内のコンテンツを拡充し、且つキャンペーン等のお得情報発信数を増やし、ベースのDAU(日毎のアクティブユーザー)数を高くしていく。
【施策例】
・プッシュ通知による起動促進
・キャンペーンの実施
・取引対象品の拡充
・アプリ内機能の追加
復帰ユーザー
【定義】
アプリをインストールして一定期間が経過後にしばらく起動をしておらず、再び起動をしたユーザーのこと
【改善の方向性】
最適なタイミングでサービスを想起させる様にユーザーとの接点を増やし、且つ復帰をさせる動機づけを行う
【施策例】
・プッシュ通知による起動促進
・復帰した際のインセンティブ付与
・(広告IDを活用したリテンション広告の出稿)
②購入率をあげる(CVR)
改善の方向性
ユーザーの行動フローを可視化することでファネル毎の遷移状況を分析し、アプリ内マーケティングや開発によるUX改善を行う。
購入率を上げるためには、ユーザーのアプリ内での動き(カスタマージャーニー)の作成が効果的です。カスタマージャーニーを策定することで、どの工程(ファネル)でユーザーが離脱しているのかがわかり、その原因を仮説立てして検証を進めることで改善することができます。
店舗アプリ内のEC事業において、一般的なユーザーの行動フローは以下です。購入率に課題がある場合には、まずそれぞれの箇所でイベントを取得してどこに原因があるのかを特定することが大切です。次に、ユーザーの行動状況に合わせてパーソナライズしたアプリ内マーケティング(プッシュ通知、ポップアップなど)を行い、次のフローへの遷移率を向上させましょう。
成果の出るプッシュ通知の活用方法については以下をご覧ください。
③購入単価をあげる(ARPPU)
改善の方向性
以下の二つの要素のどちらかもしくは両方を改善
平均購入単価
【定義】
アプリ内のユーザーの平均購入単価
【施策例】
・UI/UX改善
・高価格帯の対象品の拡充
・セット買いを促進させるキャンペーンを実施
平均購入回数
【定義】
アプリ内のユーザーの平均購入回数
【施策例】
・対象品のカテゴリー拡充
・取引回数に連動したインセンティブ付与
・プッシュ通知によるコミュニケーション
店舗アプリの売上に繋がる分析手法
本題のアプリ内改善施策について、下記にて店舗(EC)アプリの改善事例を解説します。
前提
【当アプリについて】
実店舗を持つショップのEC機能を持つアプリ。リリースして1年程度経過している成長フェーズである。インストール数は伸び続けているが、アプリ内のデータ分析などを今まで十分に行ってこなかった。
【当アプリが抱えている課題】
・インストールから取引までに至るCVRが低い
・新規インストール数は増えているがLTVが低い
※LTV:顧客生涯価値。ユーザーが継続的にアプリを利用する上で、支払う金額の合計のこと
【改善の方向性】
①アプリ内の分析と改善を通してファネルの遷移率を向上させる。
②LTVが高くなりそうなユーザーにインストールしてもらう。
ファネル分析
ファネル分析をすることで、ユーザーの離脱率が高いステージを特定し、なぜ次のステージに進まないのか原因を分析します。
参考:Metaps Analyticsのダッシュボード
例えばこの場合、「カスタマイズ→ ポイント獲得」間の遷移率が、アプリ内でのポイント獲得自体は無料でできるにもかかわらず、22%程度と低いことがわかります。
以上から、ユーザーがポイント獲得のメリットや、機能の存在を忘れている可能性が非常に高いと解釈できます。プッシュ通知やアプリ内メッセージにより機能の存在を想起させることが効果的です。
セグメント分析
セグメント分析とは、ユーザーの属性やイベント突破データを基にセグメントを抽出して、主要KPIへの貢献度を分析する手法です。
参考:Metaps Analyticsのダッシュボード
- 分析前の仮説
先行して展開していたWebサイトでの売上は、40〜50代の女性が中心であったため、アプリでも同様の傾向になると仮説を持っていました。
- 分析結果
アプリの売上の中心は20〜30代の女性でした。
また、40〜50代女性のインストール数は20代女性 ~ 30代女性より2割程度少ないことがわかりました。
- ネクストアクション
アプリはWebサイトとは異なるユーザーの売上構成となっていることがわかります。スマートフォンユーザーの普及世代と相関が高くなっています。ロイヤルティが高いことが想定されるWebサイトの既存顧客に対しての分析の母数を増やすために、アプリへの導線を強化して売り上げ構成比率が変動するか再度検証します。その結果、Webサイトにおいてメインの年齢層である40~50代女性の売上がアプリ上では上がらなかった場合、CVR改善のために原因分析を再度行うことが必要です。
まとめ
今回は店舗アプリを運営している事業者さま向けに、収益構造とEC事業の主なKPI、効果的なデータ分析手法について解説しました。新たな生活様式に適応し、自社ブランドの顧客にファンになってもらうためには、アプリを活用し、顧客データや利用データを基に一人一人のお客さんと適切なコミュニケーションを取ることが大切です。
次回は引き続き、店舗アプリを運営している事業者さま向けに、売上に繋がる効果的なマーケティング施策について解説する予定です。店舗アプリのデータ活用やEC事業のグロースに向けて課題を感じている事業者さまはお気軽にご相談ください。
Metaps Analyticsについて
「Metaps Analytics」は広告計測とアプリ分析、CRM施策の機能を備えたアプリのマーケティングプラットフォームです。広告流入経路の判定、ユーザー行動の分析、プッシュ通知、アプリ内ポップアップ等のアプリ内施策までを1ツールで実現します。また、報告書やレポートが作りやすい、直感的で見やすいダッシュボードになっており、カスタマーサポートが充実しているのでアプリ分析ツール運用初心者の方にもおすすめです。
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