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【Apple税回避?】iOSの「リーダーアプリ」で30%手数料の規制緩和。アプリ内課金は続けるべきか否か

トレンド
2021.10.14

はじめに

日本時間の2021年9月1日、Appleが「日本の公正取引委員会によるApp Storeの調査が終結」というプレスリリースを公開しました。Appleはこのリリースの中で、2022年初頭から世界中の「リーダーアプリ」のデベロッパーが、Appleが提供するiOSアプリ内の決済システムだけでなく、アプリに自社ウェブサイトのリンクを設置することでアプリ外での決済を容認する旨を発表しております。

また上記のプレスリリースに先立ち、日本時間の2021年8月27日に「Appleと米国のデベロッパが、ビジネスをサポートしながらユーザーの素晴らしい体験を維持できるApp Storeのアップデートに合意」というプレスリリースを公開しております。こちらでは、「リーダーアプリ」以外も含む米国の全てのアプリデベロッパーを対象に、Appleが提供するiOSアプリ内の決済システム以外の購入オプションの容認を明確にすることを発表しております。

これらのプレスリリースは、対象地域やアプリは異なりますが、Appleが「iOSでのアプリ内課金を義務付けていたこれまでの方針から大幅な変更に踏み切った」ことを如実に表しており、課金型のiOSアプリを提供する全てのアプリ事業者にとって必見のニュースです。

このブログでは、
・非広告収入型(従量課金/サブスク)アプリの運営者、もしくは運営の検討者
・トレンド情報を理解したい、アプリ業界に身を置くビジネスパーソン
を対象に、
一連のニュースの概要を理解いただきながら、今後のiOSアプリ運営への示唆を考えていきたいと思います。

基礎情報:「iOSアプリ以外の支払い容認」とはどんなことが起きたのか?

そもそも今回のニュースで示す「iOSアプリ以外の支払い容認」とは、どういうことでしょうか?
読者の方の多くは日本でアプリビジネスを展開されていることがほとんどであると仮定して、9月1日のリリースを中心にみていきましょう。

「リーダーアプリ」とは

9月1日のリリースで言及されている「リーダーアプリ」とはどのようなものでしょうか?
公正取引委員会が9月2日に、上記のAppleのリリースに対しての発表を行っており、その中で下記のように触れております。

音楽配信事業等においては,アプリ内でデジタルコンテンツを販売等しておらず,ユーザーがウェブサイト等で購入したデジタルコンテンツを専ら視聴等することに用いられるアプリ(以下「リーダーアプリ」という。)があり,これを活用し,デジタルコンテンツ等をウェブサイトにおいてのみ販売等するデベロッパーも存在する。
(公正取引委員会:「(令和3年9月2日)アップル・インクに対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」
,
4 スマートフォンへの音楽配信事業,電子書籍配信事業及び動画配信事業について より 引用。)

つまりリーダーアプリとは、音楽や電子書籍、動画等の配信を行うアプリのことを指しています。
また、同じ公正取引委員会の発表の中に、

音楽,電子書籍,動画等のデジタルコンテンツ及びアプリの有料の追加機能の販売並びに定期購入契約(サブスクリプション)による音楽の聴き放題等のサービスの提供等をいう。

という記述があることから、
書籍アプリなどのリーダーアプリを対象に、あらゆる課金形態のiOSアプリ外での決済を認めるというのが、趣旨と捉えて良いでしょう。
ここで一つ注意すべきポイントは、あくまで今回対象となっているのが「リーダーアプリ」である、という点です。つまり、ゲームアプリは今回の変更において対象外となっていますので、ご注意ください。

米国での動き

冒頭でも触れた通り、米国では「Appleと米国のデベロッパが、ビジネスをサポートしながらユーザーの素晴らしい体験を維持できるApp Storeのアップデートに合意」というリリースの中で、アプリのカテゴリを特定しない形で、iOSアプリの外でのユーザーの課金を明確に認める発表をしています。
なぜ米国では世界に先立って、全てのiOSアプリに対してアプリ外課金を認めることになったのでしょうか?

今回の一連のリリースに先立つ、Appleとゲームデベロッパーの米国での係争を振り返りながら確認していきましょう。

アプリ外課金をAppleが認めるようになった経緯

Appleはなぜ、今までアプリ外課金を認めてこなかったのか?

米国でのAppleとディベロッパーの動きをみる前に、重要なポイントに触れておきたい思います。
それは、「Appleがアプリ外課金を認めてこなかった理由」です。

一言で申し上げれば、「App Store事業の収益がAppleにとって重要な収益源だから」ということになります。
Appleは、iPhone事業、Mac事業、Wearables,Home and Accessories事業(Airods等)、そしてServices事業 の4部門でビジネスを展開しております。
2021年 第三四半期の業績をみても、AppStore収益を含む「Services」事業がの全事業の売上の21%に及び、MAC、iPad事業よりも大きいことからもその重要性は伺えます。

▼下図 、Apple 2021会計年度第3四半期
(「Net Sales by Category」 の左から、2021年度第三四半期、2020年度第三四半期、2021年度第一~第三四半期合計、2020年度第一~第三四半期合計を表している)

(Apple 第三四半期の連結財務諸表より抜粋:
https://www.apple.com/newsroom/pdfs/FY21_Q3_Consolidated_Financial_Statements.pdf)

App Storeによる単体での収益は公開されておりませんが、一部では2020年の総売上高は640億ドルとも報じられており(https://iphone-mania.jp/news-339250/)、かなりの規模になっています。

App Storeのビジネスモデルについてはみなさんご存知の通り、App Storeに参加するアプリディベロッパーに対して、30%の手数料をとることで成り立っております。

Appleがこれだけの強気な手数料をとる背景には、App Storeが多くのユーザーを抱えていることが考えられますが、一方でこの手数料は「Apple税」とも揶揄され、必ずしもディベロッパーからは支持されているとは言えません。

Appleはなぜ、アプリ外課金を認める様になったのか

当然、一部のディベロッパーからは強い反感を買っています。
その象徴的な出来事は、2020年にフォートナイトを提供する大手ゲーム企業 Epic GamesがAppleに対して行った訴訟です。Epic Gamesだけでなく、音楽ストリーミングサービスのSpotifyなども同様に、欧州委員会に不正競争防止法違反で提訴しています。これらの、売上規模の大きいサービスともなると、30%の手数料はまさに「重税」です。

そこでEpic Gamesは、手数料を回避すべく、「Epic Direct Payment」と呼ばれる、ユーザーがEpic Gamesから直接購入できる決済システムを導入したアプリをApp Storeでリリースしました。
ところが、この「Epic Direct Payment」実装版アプリは直ちにApp Storeから削除されてしまいます。
( Epicは削除後すぐに、Appleの過去のTVCMをパロディした意味深な動画を公開しています。ご興味がある方は、こちらをご覧ください。

これがきっかけとなり、EpicとAppleの裁判が始まりました。

詳細な経過は省略しますが、最終的には
 
 ・Epic Games;Appleへの滞納分の手数料の支払い
 ・Apple:App Store内でアプリ内課金以外の決済システムを認めないのは反競争的である
という、客観的に見てもEpic Games側の勝利と言って過言ではない判決が下りました。
ただし、その後アップルが判決を不服として控訴したため、リーダーアプリ以外におけるApp Storeのルール変更は数年先送りになる可能性が浮上しています。

この判決が、Appleからのプレスリリースが公開された直接的な背景となっています。

想定される変化

ここまでは、AppleがiOSアプリ外課金を容認する様になった経緯を振り返ってきました。
ところで、読者の皆様の興味はむしろ「これを受けて、何をすべきか?」かと思いますので、そういった観点で少し考えてみようと思います。

今後の「ユーザー課金」の選択肢

改めてになりますが、日本においては2022年初から「リーダーアプリ」におけるiOSアプリ外での課金が容認される見込みです。対象のアプリ事業者はどちらにするか選択することができるため、既存のアプリ内課金との違いをメリットとデメリット双方から捉えてきましょう。

——–
・アプリ内課金
・メリット:アプリ内での課金になるため、ユーザーの課金体験がスムーズ
・デメリット:App Storeへの手数料

・アプリ外課金
・メリット:App Store手数料が不要
・デメリット:課金体験が煩雑になることで、課金前にユーザーが離脱するリスクがある
——–

どうでしょうか?
アプリ内課金の負の面にフォーカスを当てた論調でお伝えしていましたが、このように整理してみると一長一短だといえそうです。特に、アプリ外課金にした事でユーザーがアプリから離れることにより、課金への熱量が下がってしまう事は最も避けたい懸念かと思います。

売上を拡大していくためのPDCAの回し方

当然ながら、アプリをビジネスとして運営していく上で最も重要な指標は売上です。
先ほど整理したアプリ内課金とアプリ外課金、それぞれのメリット/デメリットを踏まえつつ、売上拡大のPDCAを考えていきたいと思います。

どんな決済方法だと売上が上がりやすいか?

やはり30%の手数料を回避することは収益においてかなりのインパクトがあるため、原則としてはアプリ外課金に切り替えてみる方針が良いと思います。

ただし切り替えた後は、アプリ外課金の方が収益化できているか分析することはもちろんのこと、アプリの特性やユーザーシチュエーションを意識しながら、課金導線の仮説検証を続けることも非常に重要です。例えば、サービスへの熱量が高い有料会員登録のタイミングにアプリ外に誘導することでクレジットカード等の情報入力の手間が発生してしまうため、ユーザーが冷めてしまい購買の機会損失が一定発生します。そのため、アプリ外課金までの導線は継続的に改善していきましょう。また、ユーザーが解約しようとしたタイミングで「今までよりも安価にご利用いただけます」といった形で、App Store手数料の30%をディスカウントしたアプリ外課金に誘導する、といった手段も有効です。この場合、アプリディベロッパーは月額の収益を落とさずに、ユーザーに継続を提案することができるからです。

どんなユーザーがたくさん課金してくれるのか?

決済手段は、あくまで収益拡大の一つの選択肢ともいえます。
「ユーザーがたくさん課金してくれるアプリを目指す」ことの方が、より本質的なアプローチだと考えております。そのためには、ユーザーの行動データを収集し、分析し、理解することが重要です。

2022年初からiOSアプリ外課金が容認される「リーダーアプリ」は、多くの場合サブスクリプションの課金モデルを採用している事と思います。サブスクアプリにおけるデータの重要性を解説したブログもあるので、こちらも参考になるかと思います。

Metaps Analyticsでは、iOSのアプリ外課金が計測できます

メタップスでは、アプリの統合管理型分析サービス「Metaps Analytics」を提供しております。Metaps Analyticsには、StoSでのデータ送信機能がありアプリ外課金のデータも計測できることはもちろんのこと、課金に繋がるユーザー行動を特定するための分析もすることができます。また、プッシュ通知やポップアップのようなマーケティング機能も提供しているため、「アプリ外課金へ誘導する」と言ったアプローチも1ツールで可能です。

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